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2016.04.25

皮膚の変化と栄養

こんにちは、院長の栗木安弘です。

皮膚の変化は、教科書的に細かく分類されていますが、
代表的なものとして、
ブツブツ(丘疹)、赤い(紅斑)、ジクジク(湿潤)、ゴワゴワ(苔癬化)、カサカサ(落屑)、ひび割れ(亀裂)などがあります。
体は食べものからできており、皮膚も臓器の一部と考えれば、皮膚の変化も栄養障害のあらわれとなります。

こうした変化と栄養の関係を分かりやすいようにざっくり分けると、
 ブツブツ、かゆみ:鉄不足
 ジクジク、ひび割れ、色素沈着:亜鉛不足(糖質過剰)
 赤い、血管拡張:ビタミンB群・C・E不足(糖質過剰)
 ゴワゴワ、カサカサ:タンパク質・ビタミンA不足
という傾向があり、その多くは混在しています。

例えば、湿疹というのは、湿疹三角(下図)とよばれ、
その変化には、ブツブツ、ジクジク、赤い、カサカサなどの多様性があり、
総合的な栄養障害が原因となりますが、どのあたりの栄養が最も必要かは、
皮膚科医の目から診て皮膚の変化や部位や症状から判断し、血液検査で確認します。

「栄養障害と言われたけど皮膚に何もない」
と言われるかもしれませんが、
肉眼的に確認できないだけで、拡大鏡や顕微鏡レベルや分子レベルといった変化は誰でもありますし、
人によっては、粘膜や髪の毛や爪にあらわれる場合もあります。

アトピー、フケ症、ニキビ、乾癬…など病名にこだわるのも大切ですが、
目に見える皮膚の変化をしっかり診て考えることがもっと必要です。

2016.03.24

アトピーと貧血

こんにちは、院長の栗木安弘です。

最近、アトピー性皮膚炎の若い女性がよく受診されます。
あちこちの皮膚科でステロイド外用剤や保湿剤を処方されているにもかかわらず、
 よくならない
 ぬり薬をやめるとかゆみがでる
 よくなったり、悪くなったりの繰り返し
 あげくのはてにステロイド内服
ということで受診されるケースが多いようです。
そういった方の血液検査結果をみせていただくと、多くの方が、鉄欠乏性貧血(潜在性鉄欠乏)が認められます。

ヘム鉄はヘモグロビンに含まれ酸素を運んでいきます。また組織鉄は皮膚のコラーゲン形成に必要です。
鉄不足になれば、皮膚の酸素・栄養欠乏から皮膚機能の低下を招くため、容易にかゆみや湿疹が生じますし、
薬の運搬もうまくいかないので治療効果が乏しいことは理解できるかと思われます。

しかし実際の皮膚科診療ではそのあたりは全く注目されず、
 ダニやホコリのアレルギー検索と対策
 ひたすらステロイド外用、清潔にしてしっかり保湿・スキンケア
ばかりが標準治療として謳われています。

アトピー性皮膚炎をはじめ、がん、認知症、骨病変、消化器疾患、精神疾患、産婦人科疾患などあらゆる疾患は、
まず貧血を改善させることが基本となります。

2016.03.03

アトピーガイドライン

こんにちは、院長の栗木安弘です。

先日日本皮膚科学会学会誌からアトピー性皮膚炎ガイドラインの改訂版が届きました。
アトピーガイドライン

前回のガイドラインに少し追加されている項目はありますが、
基本姿勢は、
ステロイド・プロトピック外用(プロアクティブ療法)、TARC測定
保湿剤によるスキンケア
と今までのガイドラインとなんら変わらない内容でした。

やはりアトピー性皮膚炎は完治はできないのでこうしたぬり薬を使った対症療法(コントロール)主ですが、
治療と称しているのに治らないというのもおかしな話です。

そして予想通り、食事や栄養に関する記載も一切なく、
プロバイオティクスについてはエビデンス(科学的根拠)があるとは言い難いとなっています。
これでまた、ステロイドを適切に外用、しっかり保湿といった、
表面だけの皮膚科診療が益々推し進められることになるでしょう。
ガイドラインは同じレベルで治療が受けられるため、あるいは不適切な治療をしないように作られていますが、
私自身は作成した医師の自己満足や保身のためにあるようにしか思われません。

皮膚は内臓の鏡です。
外用剤で抑えつづけることは体内の異常を見逃す危険性もあるでしょう。

2016.02.24

皮膚掻痒症

こんにちは、院長の栗木安弘です。

皮膚に何も出来ていないのにかゆみが生じる疾患をいいます。
かゆみの原因は内臓疾患、肝臓や腎臓、血液疾患、ホルモン異常、薬剤性などがあります。
以前何かの講演会で、乾燥肌によるものが多い、演者は述べていましたが、
私は、皮膚に何も出来ていないのに乾燥肌(カサカサ)はおかしいと思いました。

日常診療で皮膚掻痒症はよく経験しますが、やはり鉄不足が圧倒的に多いです。
血液検査をしてみると軽い貧血か、
ヘモグロビンが正常にも関わらず、フェリチンが基準値内でも低値の方がほとんどですが、
鉄不足=かゆみという認識は医師も患者さんもあまりないため、放置されていることがほとんどです。

皮膚は内臓の鏡と言います。
多くは内蔵の病気による皮膚の変化というイメージがありますが、
病気になる前からすでに栄養障害という異常は誰でも始まっており、その影響でかゆみや皮膚の変化があらわれます。

2016.01.13

皮膚が教えてくれる。

こんにちは、院長の栗木安弘です。

皮膚の変化や状態を診るのが皮膚科診療の基本です。
他の先生はあまりされないとは思いますが、
私は専用のルーペを使って、患者さんの皮膚に顔を接近してよく診察していますが、
これも皮膚の変化を詳しく確認するためです。
以前こうした診療で判断が付かなかった皮膚疾患が判明したこともあって、以後このスタイルで診察しています。

皮膚の変化は非常に多彩です。代表的な変化として、
丘疹(ブツブツ)、紅斑(赤い)、亀裂(ひび割れ)、鱗屑(カサカサ)、湿潤(ジクジク)、苔癬化(ゴワゴワ)、色素沈着があります。
こうした変化の組み合わせを診て、アトピーやフケ症やニキビなど診断しますが、
一方で皮膚も内臓の一部であるため、
その変化の背景には必ず体内の栄養障害があることを念頭に置いています。(栄養障害の確認は血液検査)

栄養療法は不足した栄養素をサプリメントで補給をするわけですが、
同時に栄養障害の原因となる食事の乱れ(糖質過剰)以外に、
消化管、肝臓、貧血といった栄養の吸収・代謝・運搬に関わる臓器の栄養改善も必要となります。

病気の診断も重要ですが、
皮膚科医として詳しく皮膚を診ることで、皮膚の変化を体の異常のサインとして捉えて対応したいと思います。

2015.12.07

各論総論

こんにちは、院長の栗木安弘です。
先週土曜日は大阪で皮膚科地方会がありました。
多くの症例発表があり、私もフェリチンと鉄に関する発表をさせていただきました。

いつも学会に出席するたびに発表内容や質疑応答を聴くと、皮膚科だけでなく、学会全体がそうですが、
 病理組織診断が正しいかどうか
 手術などの治療内容の検討
 薬(ぬり薬)をいかにうまく使うか
 治療が適切であったかどうか
 珍しい疾患
など病気や治療といった表にあるところばかりに注目されているなぁと思います。
その一方で、
 病気がなぜ起こるのか?予防法
 手術や治療の前の栄養管理
 血液検査や基準値について
 薬を減らす対策 
 食事と栄養と皮膚の関わり
などは臨床上は非常に重要なことにも関わらず、こうした発表や検討はあまりされないようです。

それが医学というものかもしれませんが、
各論(病気)だけではなく、もっと総論(病人)についても研究検討してほしいと願っています。

2015.12.05

かゆみはつらい

こんにちは、院長の栗木安弘です。

かゆみは何の前触れもなく突然出てきますが、
多くは仕事中は少なく、帰宅して家でリラックスした時によく経験します。
また、食後やアルコール・カフェインなどを摂取した場合、入浴後にもよくあります。
当然何かの刺激物が付着した場合も生じますし、
体内の異常のあらわれとしても生じますが、多くは鉄不足や糖質過剰の方に認められます。

世間一般にはかゆみは、「掻かないこと」が正しい行為のような風潮で、
「掻くのはよくない、掻いたらダメ」と叱咤されている方、患者さんに指導されている皮膚科医も見受けられます。
そのためかゆみを我慢されている方もおられますが、
かゆみ自身もつらいけど、それを我慢する方がもっとつらいような気がします。

私自身も痒かったら掻いていますし、患者さんにも「我慢せず、掻けばよい」と指導しております。
掻いたら悪化する、バイ菌が入ると思われていますが皮膚が丈夫であればそんなことはありません。
それでも掻くのが嫌なら、かゆみ対策として、
 冷やす
 体を動かす
 かゆみ止めを飲む
 痛み刺激に変えて紛らわす。(痛みはある程度我慢はできる)
あたりです。

コレステロールや胃酸など本来体に必要な成分が病気の犯人として思われているように、
皮膚科においても“掻くこと”が皮膚が治りにくい原因や悪化因子として考えられていることにとても違和感を覚えます。

2015.11.20

アトピーの原因

こんにちは、院長の栗木安弘です。

アトピーは、
 角層内セラミド減少
 真菌、黄色ブドウ球菌
 フィラグリン遺伝子異常
 神経系細胞
などが原因として報告されていますが(一体どれやねん)
実際はこうした研究成果が発表されてもすぐに治療薬として応用されることはないようです。
そのため現状はステロイド外用剤やスキンケアでのコントロールが主体となりますが、
日々皮膚の変化を診察し、血液検査を診ていると、
アトピーを含め、皮膚の変化は明らかに内臓の変化(栄養障害)であることはほぼ間違いないようです。

栄養障害の原因は、
 食事のかたより(糖質過剰、ω6過剰、タンパク質不足)
 消化吸収(ピロリ、胃酸分泌低下、リーキーガット、腸内環境)
 肝機能障害(脂肪肝など)
 貧血
 需要亢進(成長、妊娠、スポーツ)
 薬剤性
といった栄養の吸収・代謝・運搬障害が複雑に絡み合っているため、
どこに原因があってどの栄養素が優先的に必要かは個人個人違ってくるため、難しい反面やりがいもあります。

「今の医学ではほとんどの病気は治せません。コントロールするだけです。医学で治せるのは感染症の一部くらいです」
「アトピーも生活に支障のない程度にステロイドやスキンケアでコントロールすることです」
と某皮膚科教授がある雑誌で述べていましたが、これはある意味負けを認めているような印象を私は受けます。
アトピーコントロール、原因解明もよろしいが、早期に治療に結びつける対策がやはり必要です。

2015.11.02

全身を診る皮膚科

こんにちは、院長の栗木安弘です。

この土日は神戸で開催された日本皮膚科学会中部支部総会に参加致しました。
私も「アトピー性皮膚炎における血液検査の意義」というタイトルでポスター発表を致しました。
今回は、具体的な血液検査の読み方や改善例をご紹介させていただきました。

今回もそうですが、毎年学会では、
アトピー性皮膚炎をはじめ皮膚疾患の予防は正しいスキンケアを行うことを強調されていますが、
私自身は、全身に栄養を入れ、皮膚を強くすることが本当のスキンケアだと思います。

学会会頭も「全身の診れる皮膚科医を」ということをあいさつで述べられていましたが、
いい意味で専門的、悪い言葉で局所しか診ない傾向が皮膚科にはまだまだ根強いと思われました。

2015.10.30

機能性皮膚科学会

こんにちは、院長の栗木安弘です。

長年、皮膚科業界にいると、
皮膚科診療の決まりや約束事みたいなものが分かるようになります。
その一つに皮膚疾患の確定診断には、
病変部の一部を切り取り、その細胞の変化を顕微鏡でみる病理組織検査というものが行われます。
その対象は、
 ①広範囲で重症の皮膚疾患
 ②なかなか良くならない皮膚疾患
 ③難病といわれる皮膚疾患
 ④皮膚腫瘍
が多く、一般病院や大学病院では生検による病理組織検査が日々行われています。

私も大学病院時代には上司の指示で一日数件の生検を行いましたし、
一般病院でははっきり診断がつなかい皮膚の変化によく生検を行っていました。
病理組織検査が診断の切り札という感じでしたが、
それでも診断がつかなかったり、診断しても良くならない、といった方も少なくありませんでした。

病理組織検査は細胞の形態や並び方や変化を見ます。
皮膚科医に求められるのは肉眼的な診断だけでなく、病理組織検査の診断も出来る能力で、
勤務医の頃は、さまざまな病理の教科書を読んだり、皮膚病理カンファレンスやセミナーにも参加して来ました。

皮膚科医として皮膚や細胞の変化を確認し、診断確定することは重要だと理解できますが、
私自身はそれ以上に皮膚の機能という部分に注目すべきだと考えています。
皮膚の機能は、すでに遺伝子レベルでの基礎研究は幅広く行われているようですが、なかなか臨床には応用されていません。

こうした機能を分子(栄養素)レベルで理解すれば、
表皮の角化にはビタミンA・D、亜鉛、
コラーゲンの形成にはタンパク質、鉄、ビタミンC、亜鉛、
ムコ多糖類は、ビタミンA、コンドロイチン硫酸など多くの栄養素が関わり、
不足した場合には皮膚の機能低下により、皮膚のさまざまな変化が表れてきます。
さらに皮膚の栄養不足は、消化管や肝臓といった内臓の機能低下(栄養障害)と密接に関わります。

皮膚疾患の診断・治療も重要ですが、それだけでは不十分です。
やはり皮膚の機能そのものを回復させなければ、長年苦しんでいる患者さんは満足されないでしょう。

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