外用は面倒
こんにちは、院長の栗木安弘です。
皮膚科医であるにも関わらず、外用療法は面倒だなぁと感じます。
広範囲の場合、または背中や頭など患部がみえない場合はなかなかぬれないし、
仕事や育児が忙しい場合にも継続は難しいですし、
手足や顔などはべたついて無理だと思われます。
自分自身がベタベタぬるのがあまり好きではないので、患者さんには無理にはすすめられませんが、
実際は治療方針として決められており、多くの皮膚科医は、細かい外用指導をおこないます。(できもしない場合もあります)
確かに細かい外用指導も必要な場合もありますが、
私自身は、
手の届く範囲でぬる
痒みや赤味の強い部位だけぬる
カサカサや赤味がなくなればぬらなくてもいい
などできるだけ患者さんの日常生活に負担の少ない外用指導をおこなうようにしております。
皮膚科=ぬり薬が世間の常識ですので、患者さんの多くは、
「一発で治るぬり薬」
「効果的なぬり薬のぬり方」
「正しい?スキンケア指導」
を皮膚科医に期待されますが、ぬるというのは感染症以外は、あくまで対症療法です。
やはり慢性疾患や難治性の場合、外用だけではなく、十分な栄養を補給をおこない、
内臓および皮膚の機能を高めることが、かゆみや皮膚のトラブルの改善につながります。
こうした考え方が皮膚科医のなかでもっと理解されれば、よくなる患者さんも増えるのではないかと思います。
あぁ、しもやけ対策
こんにちは、院長の栗木安弘です。
毎日寒い日が続いています。こんな気温の低い日には“しもやけ”の子供さんが受診されます。
しもやけは以前にも説明しましたが、寒暖差による虚血-再灌流による炎症が原因で、皮膚の血管や血流に異常があるわけです。
教科書的には、
保温、ビタミンE内服、血管拡張剤内服、漢方薬が記されていますが、
ビタミンEは保険薬は合成ビタミンEなので有効ではありませんし、血管拡張剤や漢方薬は子供は適応がなく、飲めません。
そのためかゆみ対策によるステロイド外用や気休め程度のヘパリン類似物質外用となります。
しもやけという子供によくある身近な疾患であるにもかかわらず、実際は有効な治療法がありません。
しもやけの生じる仕組みから考えれば、タンパク質、鉄、ビタミンEなどの栄養補給で、ヘム鉄を飲んで冷え性やしもやけが出なくなった方もおられますが、子供にわざわざ自費のサプリメントを買ってまで治療する方はほとんどおられません。
しもやけだけではありませんが、しもやけをみるたびに皮膚は内面からのアプローチが必要だとつくづく思います。
皮膚と抗酸化
こんにちは、院長の栗木安弘です。
酸化とは活性酸素による体へのダメージで、これを酸化ストレスと呼びます。
酸化がすすめば、
血管においては動脈硬化、心筋梗塞
脳細胞においては認知症、パーキンソン、脳梗塞
肝細胞では肝炎
水晶体では白内障
皮膚では皮膚炎や湿疹
胃粘膜では胃炎
がん発生、糖尿病合併症
などさまざまな疾患に酸化ストレスが関与しており、抗酸化対策を行うことがこうした疾患の予防や進行をおさえます。
ただし抗酸化対策は、ビタミンB群・C・E、EPA(エイコサペンタエン酸)、亜鉛、グルタチオン等の栄養(サプリメント)ですので、薬物治療中心の医療現場においてはこうした抗酸化対策は医師の間では理解が進んでいません。
先週土曜日におこなわれたアレルギー講演会でも、
乾癬の場合、皮膚の炎症が進むことにより、体内の血管の動脈硬化が発生するという研究結果を報告されており、皮膚の治療の重要性を強調されていました。
しかし私は皮膚からではなく、体全体の酸化が進めば、当然皮膚、血管にも異常がおこるため、まずは抗酸化対策だろうと思いました。
アトピーが治った?
こんにちは、院長の栗木安弘です。
世間にはアトピー性皮膚炎に対する〇〇療法って山のようにあります。
確かに〇〇をして治った皮膚の写真を掲載しているブログもありますが、
皮膚の表面的な変化だけで、科学的な証明はされていないし、自然治癒という場合もあります。
さらに一時的によくなっても、かゆみや湿疹といった皮膚の変化は多少誰でもありますし、
ここがよくなっても別の部位に発症することや、一時的に悪化する場合もあるため、
アトピーが治りましたよ、という線引きはどの時点をもって判断するのは非常に困難です。
こうした“治った”の定義は難しいようですが、
アトピーでない自分自身に当てはめてみれば、
多少かゆみや発疹はあるけれども、ぬり薬やスキンケア、抗アレルギー剤があまり必要がなく自然に元に戻る状態、
つまり皮膚科のお世話にならなくなった状態が“治った”と考えます。
ただし皮膚科に来なくなった場合、
①治った場合と、②別の皮膚科に行かれた場合もあり、
その確認は難しいようです。(治りました、と受診される方はあまりいない)
とにかく医療機関を受診して治療している間は、対症療法だけなので、残念ながら病気は治っておりません。
根本的に治すためには、自己の免疫力・消化吸収力など治癒力をあげなければなりませんが、これには時間も費用,がかかるようです。
苔癬化
こんにちは、院長の栗木安弘です。
苔癬化とは皮膚の状態をあらわす皮膚科用語で、写真に示すような皮膚が象のように固くゴワゴワになる状態です。
経過の長いアトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚にもよくみられ、掻破による慢性刺激変化と考えます。
組織学的には、表皮の肥厚と炎症細胞浸潤をみとめ、
慢性炎症により表皮のターンオーバー(新陳代謝)が停止した状態のため、いつまでも治らないというわけです。
栄養学的には、
表皮細胞の分裂には亜鉛、分化にはビタミンA、分裂・分化の命令はコラーゲン、
表皮細胞はケラチンというタンパク質で出来ており、細胞のエネルギーはビタミンB群が主となります。
また長年の重金属蓄積による影響なども考えられます。
苔癬化の治療はステロイド外用、免疫抑制剤が一般的ですが、
元通りのつるんとした皮膚になるまでは医学的には難しいようです。
やはり皮膚をきちんと代謝させる適切な栄養と、
栄養の吸収・代謝・運搬に関連した消化吸収・肝機能・貧血の改善も必要となり時間もかかります。
ステロイド併用によりかゆみや見た目の炎症を抑え、同時に栄養療法を行うことがベストかもしれません。
ニキビ治療に一言
こんにちは、院長の栗木安弘です。
この土日は研究会、勉強会、学会の連続でした。
土曜日は大阪でアトピー性皮膚炎研究会で発表、その後は栄養療法の勉強会に参加いたしました。
日曜日は京都で日本臨床皮膚科学会近畿ブロック支部総会に参加いたしました。
研究会はアトピーの内面からのスキンケアというテーマで栄養に関する内容を発表しましたが、
血液検査での栄養評価やサプリメントを使用することは皮膚科の間ではまだまだ理解が乏しいと実感しました。
学会でのニキビ講演もなかなかよかったですが、
ぬり薬だけでなくもう少し違う面からのアプローチもご紹介してほしかったです。
最近はニキビのぬり薬が続々と登場しており、
世界標準レベルになったと喜ばれる医師もおられますが、私個人としてはもうこれ以上要らないと思っています。
さまざまなニキビのぬり薬は、
うまく使い分けるコツ
各ぬり薬の併用のやりかた
スキンケアとの組み合わせ
など、熱心に細かい外用やスキンケアの指導をされているクリニックも多いようですが、
実際は毎日ケアできないし、面倒くさい、べたつく、洗いすぎによる乾燥、かぶれや刺激なども問題点もあります。
食事の話も少し触れられておりましたが、タンパク質を多めに、サプリメントの活用ではなく、
相変わらず油ものを控えて、野菜中心のバランスのよい食事のみの紹介だけでした。
薬をうまく使うことが医療の基本であるため、皮膚科はほとんどぬり薬でしょう。
しかし、研究会の発表で強調したように、もっと皮膚の内面や体の内側を理解した皮膚アプローチ(修復)をしなければ、
皮膚科はただのペンキ屋だけで終わってしまうような気がします。
パッチテスト
こんにちは、院長の栗木安弘です。
かぶれや湿疹の原因を見つけるためのパッチテストという検査があります。
金属や疑わしい化粧品などを皮膚に貼り付けて反応をみる検査で、
この検査で原因物質を特定するというものです。
パッチテストはかぶれのや湿疹の原因をはっきりさせるには有効な検査ですが、
暑い時期は検査ができない
判定は医師の主観的は判断であり、偽陰性、偽陽性、刺激反応もある
皮膚に貼って検査するため、病変部が広範囲であれば検査できない
貼ることで感作(アレルギーの獲得)される可能性がある
陽性反応が出た金属(歯科金属、食物内金属)の除去や回避であるがコストや手間がかかる
という問題点もあります。
日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会では、
こうしたパッチテストにより、さまざまな物質のかぶれが多数報告され、新たなアレルゲンも次々判明されています。
通常は原因物質を特定して回避すべきことが基本ですが、
洗剤成分やゴムや染毛剤など職業柄、全て回避できない場合もあります。
また食物アレルギーにしても食品の反応が多いとすべて除去はできない等の問題点もありますし、
金属アレルギーの場合では歯科金属を除去してもよくなる保障もありません。
アレルゲンの原因追究や回避もよろしいが、
犯人ばかり捕まえて犯罪を防ぐ対策をしていない気がします。
今後はかぶれにくい・アレルギーの起こしにくい丈夫な皮膚や体を作る検討や対策もしてほしいと思います。
高齢者のかゆみ
こんにちは、院長の栗木安弘です。
かゆみを訴える高齢者はよく受診されます。
通常は乾燥肌が原因と考えられており、かゆみ止めや保湿剤の処方がおこなわれますが、
それでもよくならない頑固なかゆみが続くこともあります。
栄養的に言えば、鉄不足がかゆみの原因となり、高齢者の多くに軽い貧血や鉄不足が認められます。
ただ多くの場合、貯蔵鉄であるフェリチンは測定されませんし、(測定しても基準値が幅広すぎで問題なしと判断される)
Hbが低い場合には軽い貧血ということで放置されているケースが多いようです。
鉄不足は食事以外に薬剤による代謝異常も原因と考えられます。
また、かゆみは薬剤性という場合もありますが、現状では中止や減薬は難しいようです。
(薬の添付文書には必ずかゆみという副作用が記載されている)
主治医からは、
「血液検査は基準値に入っているから問題なし」
「治療はうまくいっている」
「内臓は問題ない」
と言われても、
実際、かゆみが強い、皮膚のトラブルで悩まれている高齢者は大勢おられます。
一発で効くぬり薬を皮膚科に期待されますが、やはり減薬、栄養対策をすすめることが必要です。
皮膚は訴える
こんにちは、院長の栗木安弘です。
多くの方々は、
皮膚に何もなければ正常
かゆみやブツブツなど皮膚の変化があれば皮膚の病気
と思われていますし、私自身も以前はそうでした。
つまり、皮膚は正常か病気かだけで判断されることが多いようですが、
実際は病名はつかない皮膚の変化や異常はたくさんあります。(皮膚だけではありませんが…)
自分自身の皮膚をジーとご覧なれば分かりますが、
よくみれば、赤味やブツブツやカサカサやかゆみなど、なんらかの変化は誰でもみられます。
その変化は、ごく一部だけの変化であったり、ルーペや顕微鏡でようやく確認される変化もあります。
ほとんどの人が栄養障害だと捉えれば、大なり小なりこうした皮膚の変化が出てくるのは当たり前です。
皮膚科医の役割は皮膚の病名をつけ、適切な外用指導だけでなく、
目を皿のように、あるいはルーペでじっくり拡大して皮膚を観察し、
皮膚が内臓の異常(栄養)を訴えていることを的確に捉えてやることが究極の役割だと考えています。
そのためにも、皮膚だけでなく栄養や食事、内臓疾患、血液検査などの幅広い知識も必要となります。
かゆみとは?
こんにちは、院長の栗木安弘です。
かゆみというのはなくすことは不可能で、ある程度のかゆみは誰にでもあります。
皮膚というのは内外からさまざまな刺激が一番加わる臓器です。
かぶれ物質、汗、衣類、洗剤、石鹸、化粧品、スキンケア商品、髪の毛、ホコリ、ダニ、虫、空気中の有害成分、紫外線、湿度や温度、気圧、微生物、局所の運動、放射能、電磁波、食事、薬物…などあげればきりがありません。
こうした刺激にいちいち反応してかゆみが出ているのであれば、
一生かゆみが継続するはずですが、
出たり出なかったりしているのは、自己でかゆみを抑えているのかもしれません。
つまり、何らかの刺激や接触でかゆみが生じるのではなく、
かゆみを抑える力が低下した場合、かゆみが生じると考えれば、
やはり刺激や接触に負けない丈夫な皮膚を作ることが必要だと思われます。
かゆみだけでなく、がんや感染症をはじめ、病気というのは、昨日今日に生じたものではなく、
自身の治癒力がかなり低下した結果、発症すると考えた方がよいかもしれません。