消化吸収と皮膚
こんにちは、院長の栗木安弘です。
専門性が高くなればなるほど、
皮膚は皮膚科
消化吸収は消化器内科
という感じで臓器別あるいは疾患別の対応となりますが、
皮膚は内臓(栄養)の鏡という観点から考えれば、皮膚科医も胃腸や消化吸収の知識や対策が必要となります。
栄養療法を学ぶようになって、貧血や肝機能だけでなく、特に重要視していることは栄養の入り口であるところの消化吸収となります。サプリメントが効く効かない差はいくつかありますが、やはり消化吸収が悪い方は栄養療法の効果が乏しいと感じます。
皮膚の変化から必要な栄養素を選択するだけでなく、可能であれば、口腔ケア、ピロリ除菌、胃酸分泌、腸の機能回復や抗炎症、便秘や下痢、腸内環境の改善などを一緒に行うことが、皮膚だけでなく体全体を根本的によくするポイントとなります。
栄養療法をご希望や熟知されている方はこうした部分の説明は理解されますが、通常は、皮膚科医が専門外の消化吸収のことを説明しても説得力がなく、また高額な消化吸収改善のサプリメントをお勧めしても積極的に購入される方はそれほどおられません。しかし、それでも必要なことなので毎回しつこく説明させて頂きます。
医療と科学
こんにちは、院長の栗木安弘です。
医療というのは、論文や研究といった一応科学的なエビデンスをもとに、
“病気を治す”という大義名分のための、
ある程度のリスクを覚悟した医師特権の合法的行為として考えます。
当然それ以外の行為は自費診療、代替療法や民間療法と言われ、それらに関わる医師は異端者扱いされ、違法行為とみなされる場合もあります。
しかし科学的なエビデンスという割には、どう考えても本来の科学(生化学、生理学、解剖学、免疫学)でない行為もあります。
例えば、鉄欠乏性貧血時に処方される鉄剤は、非ヘム鉄(無機鉄)で、これは胃酸がなければ吸収されません。鉄剤により胃の痛みやむかつきが出た場合、専門医でも胃薬(胃酸抑制剤)を処方します。
つまり、鉄剤+胃薬(胃酸抑制剤)という病名に対する処方は保険適応や治療ガイドラインでは間違いありません。しかし体の代謝から見ればこの組み合わせはあまり効果的ではありません。他にもビタミンB12製剤あるいはカルシウム製剤+胃薬(胃酸抑制剤)も同じパターンですし、SU剤とCa拮抗剤は相反する作用です。
皮膚の機能から言えば、何かを長くぬるということも皮膚常在菌やpHにとっては科学的ではないかもしれません。
論文や研究を重視する医療・医師に対して、栄養療法は本来の科学を重視します。エビデンス中心の学会でこうしたことを唱えれば当然批判や意見がかみ合わないことがしばしばあります。
日々診療をおこなっていますと、栄養療法を併用すれば良くなる可能性がある方は大勢います。病気に対する決められた対応ばかりではなく、栄養と病気の関わりを理解し、サプリメントの有効性も理解していただきたいと思います。
ガイドライン
こんにちは、院長の栗木安弘です。
「ガイドラインなんかクソくらえ」という医師もおられますが、
万人が一定レベルの医療を受けられるため診療マニュアルです。
しかし一方で医療訴訟に対する免罪符であり、学会お墨付きのガイドライン通りであれば、治らなくても、医療トラブルがあっても過失に問われない可能性も高くなります。
難渋疾患、重症患者さんの多い大学病院では、治療トラブルや訴訟を考慮して、出来るだけ保険診療中心のガイドライン治療が大半で、自身も大学病院時代は、患者さんのためというよりは、過失の問われないためのガイドライン治療を行うことと詳細なカルテ記載を徹底的に指導されました。
学会誌を見ますと、毎月のようにガイドラインが発表され、内容は薬物中心で、数年に一回新薬に合わせて都合よく書き換え(改訂と言われるが…)が行われます。栄養や食事は悲しい事にエビデンスが低い理由で数行しか記載がありません。
ガイドラインに沿ったマニュアル治療もいいでしょうが、皮膚は疾患が重複している例(ニキビ+湿疹、アトピー+ヘルペスなど)が多く、ガイドライン通りには上手くいかないこともあります。ガイドラインだけではなく、やはり皮膚の細かい状態や変化に注目した対応が望まれます。
原因不明
こんにちは、院長の栗木安弘です。
この言葉は、診察ではできるだけ言わないようにしています。
病気のほとんどはこれといった確かな原因が判明しないため、
薬で症状や検査異常を抑えたり、患部を切り取る、いわゆる対称療法がメインとなります。
先日も他院で、
患者「アトピーの原因を知りたいので採血して下さい」
皮膚科医「アトピーは原因不明なので、血液検査しても意味がない」
と言われてこちらに来られた患者さんがおられました。
採血結果は、基準値だけしか見ない医師のとっては異常なしですが、
栄養的には鉄、ビタミンB群、タンパク質不足などが明らかになりました。
よく考えれば、身体は食べ物で作られ、
皮膚も含めた各臓器は栄養の至適量により、その機能が左右されます。
よくならない病気や症状、難病なども、
栄養というフィルターを通せば、意外と解決することも多いようです。
TV番組の仰天ニュースの難病特集などを見るといつも栄養療法を勧めたくなります。
新薬
こんにちは、院長の栗木安弘です。
最近アトピー性皮膚炎に対する新薬が発売されました。
アトピー性皮膚炎の初の抗体医療薬で、
おもに重症や難治のアトピー性皮膚炎を対象とした治療薬となります。
こうした薬に関連した講演会なども主催され、
新薬が出て、治療の選択肢が増えて、喜ばしいと思う医師が大半ですが、
素直ではない私は手放しでは喜べなかったです。
冷静に考えれば、こうした新薬は、
安全性や長期の副作用はどうか?
妊娠、授乳、小児の適応は?
コストは?
いつまで続けるのか?
などいくつかの課題や問題点も残ります。
ガイドラインや論文や学会では、医師の大半は、病気の治療=薬しか頭にありません。
今後どのような新薬や画期的な治療薬が開発されても、これら全てリスクのある対症療法であることを理解すべきです。やはり人の体の根幹である食事(バランスや野菜中心だけなく)や栄養に目を向け、本来の治癒力を引き出すアプローチが必要かと思われます。
自分への投資
こんにちは、院長の栗木安弘です。
クリニックで取り扱っているサプリメントは、
栄養療法専門サプリメントで、市場に出回っているものより高額です。
一般にサプリメントはお手軽で安いというイメージがあり、高いサプリメントは敬遠される方がほとんどですが、 サプリメントの原材料、製造加工、濃度、配合などを考えれば、本来は妥当な値段かもしれません。
自身のサプリメント代は月ウン万円しますが、一旦病気になれば、検査治療費・入院費・通院費にいくらお金がかかるか分かりませんし、治療がどのくらい続くのかも分かりません。最近の抗がん剤はめちゃくちゃ高いですし、治療や処置の後遺症、薬の長期服用による副作用も心配です。
病気や寝たきりにになれば家族やクリニックスタッフにも大変迷惑がかかります。
私の嫌いな「早期発見早期治療」が医療常識のようですが、高騰する国民医療費のことを考えれば病気にならない予防策が重要です。
ただし予防は県や国の補償はなく、ある程度自費負担を覚悟しなければなりません。
ロボットや高級車など、精密機械の修理やメンテにはそれ相当の費用がかかるのに、それ以上に精巧なヒトの体がタダや安価でよくなるはずはありません。
月ウン万円とはいいませんが、宝石やバックを買うよりは、せめて1万円くらいでも体に投資をしていただきたいと思っています。
かゆみと栄養
こんにちは、院長の栗木安弘です。
“かゆみ=アレルギーや乾燥”というイメージをお持ちの方は多いかもしれません。しかし食物アレルギーやじんま疹などは食べ物が関係するように、かゆみには食事や栄養も深い関わりがあります。
かゆみを生じる原因にはいくつかあり、食事や栄養に関して言えば、
①糖質過剰
②コラーゲン不足(材料であるタンパク質・ビタミンC・鉄不足、糖質過剰による糖化)
③遅延型食物アレルギー
④刺激物、アルコール、コーヒー
⑤粗悪な油(植物系、古い油)の過剰摂取
などが挙げられます。
かゆみの原因は個々で異なりますが、自分自身では、卵や糖質過剰やコーヒーを飲むと数日後にかゆみが強く現れます。
かゆみ神経は、その電気信号の伝達に、ビタミンB群、鉄、カルシウム、マグネシウムなどが関与するためこうした不足もかゆみを引き起こしやすい原因となります。
かゆみ止めのお薬が効かない、効きにくい方は、あれこれ薬を変えるよりは、まず普段の食事を見直すこと、できれば不足している栄養素をサプリメントで摂取することで、即効性はありませんが、お薬の効きがよくなる、かゆみの軽減や予防に繋がります。
最後にかゆみは「できるだけ掻かない」ことが常識美徳であり、皮膚科診療でも「掻いちゃだめ」とよく指導されます。しかし実際はかゆみは我慢できないし、掻くことは快感です。犬も猫も掻いているのに人間だけがかゆみを我慢して、何かを塗っていることも不思議でなりません。
皮膚が丈夫であれば、掻いて傷ついてもすぐに修復はされます。
栄養と学会
こんにちは、院長の栗木安弘です。
時々皮膚科学会で栄養に関した内容を発表させていただいております。
こうした内容を応援していただける医師もいる一方で、
あまり快く思わない医師も実際におられます。
受け入れない理由としては、
エビデンスに乏しい。
持論、思いつきでしかない。
など学会の趣旨とは異なることが理由の一つとなります。
栄養はエビデンスではなく、ある意味生化学であるため、すでに医学部でも習っている事で、エビデンス以上に広く認知された内容であります。また、どのような疾患や治療法でも最初は持論や思いつきになります。(偉い人が言えば仮説や素晴らしい発想と絶賛されるが…)
体の仕組み、病気の成り立ちには生化学な異常が存在し、その是正には食事やサプリメントを用いたオーソモレキュラーが必要となります。しかし医者の多くは、エビデンス、診断→治療(=薬)という方程式を医学教育や学会で刷り込まれており、オーソモレキュラーを理解させるためには、馴染みの薄い生化学、栄養代謝やサプリメントの正しい知識が必要となります。
先日行われた抗加齢学会では、栄養や食事、遅延型食物アレルギーやオーソモレキュラーが当たり前のように取り上げ、討論されており、また参加者もさまざまな科や分野の専門家ばかりでした。身体や病気を対象とする同じ医学会でも随分違うなぁと感じました。
金属アレルギー(持論)
こんにちは、院長の栗木安弘です。
金属アレルギーに力を入れてやっておられる先生方には申し訳ありませんが、
個人的には金属アレルギーには懐疑的な考えをもっています。
金属アレルギーが疑われると、
まずいくつかの金属を皮膚に張り付けて反応をみるパッチテストがよく行われます。
しかしパッチテストでの判定は科学的数値ではなく、皮膚の反応を医師の肉眼的な判断で行われ、偽陽性や偽陰性、単なる刺激反応もあります。
陽性反応の場合、ニッケルやクロムなど生体にとって必要な金属に反応を生じること自体がやはり納得できず、 反応した金属の含まれた食材を控えるという対策自体も、
消化吸収の仕組みから考えれば、そんな単純なことではないし完璧には除去できません。(仮に完全除去すれば必須金属の不足が生じます)
そしてもっとも疑問に感じるのは、鉄アレルギーがほとんど報告されないということです。生体内でもっとも多い金属であれば反応する確率も非常に高いかと思いますが、全くそのような報告もありません。
勤務医時代も金属アレルギーの検査をして除去指導もしましたが、劇的によくなった方もおられませんでした。
金属アレルギーというのは、基本的には刺激反応であり、やはり栄養障害で皮膚が弱い方は外からの刺激に反応しやすいため、金属にも容易に反応します。
パッチテストを数回すれば確実性が高まりますが、何回もすれば感作の危険性もあります。
最近、鉄不足がニッケルの吸収を促進するという報告もあるように、
https://nutmed.exblog.jp/21984293/
日々診療していますと鉄不足の方は金属アレルギーが多い印象を確かに受けます。個人的には栄養補給により体内および皮膚の機能を高めれば、金属刺激反応は軽減すると思われます。
皮膚外科
こんにちは、院長の栗木安弘です。
皮膚科の手術と言えば、
傷をきれいに縫合したり、皮膚のできものを切除、植皮などがメインとなります。
外科に比べて短時間で終わりますし、面倒な術後管理もあまりなく、トラブルは少ないようです。
こうした理由から医学部を卒業して、外科的なことができる皮膚科を選択しましたが、
世の中そんなに甘くなく、大学病院時代は、重症患者さんや難しい手術患者さんが入院され、長時間の手術、予想もしない術中あるいは術後トラブルもいくつかありました。
また医局というピラミッド組織であるため、
納得いかない治療方針であっても、やむなく手術をしていたこともありました。
その後、勤務医時代はある程度好きなようなに手術をしておりましたが、
今考えれば栄養状態がよろしくない患者さんは、感染症を併発したり、縫合不全など術後経過もよくありませんでした。
手術の技術を磨くこと、手技を追究すること必要ですが、
栄養療法を知ると、手術がうまくいくための患者さんの栄養状態の把握や対策も同時に必要であると強く感じます。